上部構造評点1.0の意味は?
木造住宅の耐震診断を行うと、上部構造評点が算出され、この評点が1.0以上あるかどうかが一つのポイントになります。
上部構造評点1.0が意味するものは何でしょうか。
■ 上部構造評点とは
上部構造評点とは、想定した地震によって建物に加わる力に対し、その建物が保有している耐力がどれくらいあるかを示した数値です。以下の式で表されます。
上部構造評点=(建物が保有している耐力)/(想定地震時に建物に加わる力)
=(保有水平耐力)/(必要水平耐力)
評点が1.0ということは、想定地震によって加わる力にちょうど耐えられるだけの耐力を建物が有していることを示します。評点が0.5なら地震時に加わる力に対し、半分の耐力しか持っていないことになります。
したがって、耐震診断で上部構造評点が1.0未満であれば、1.0以上になるような補強工事を考えます。ただし、経済的な理由から、まずは0.7以上にする補強工事を行う場合もあります。
■ 想定している地震の大きさ
では、想定している地震とはどのくらいの大きさなのでしょうか。
我が国では、建物を新築する場合、2段階の地震を想定して耐震設計を行います。一つは震度5弱程度の中地震、もう一つは震度6強程度の大地震です。
お金と時間をかければいくらでも強い建物がつくれるかもしれませんが、現実的にはどこかで折り合いをつけなくてはなりません。
そこで、建物が建っている間に数度遭遇するかもしれない中地震(稀に発生する地震)では建物が損傷しないように、そして建物が建っている間に一度遭遇するかもしれないような大地震(極めて稀に発生する地震)がきたら、たとえ建物が損傷しても倒壊せずに人命だけは守れるようにしようという考え方を採用しています。
さて、今回問題にしている耐震診断の場合ですが、新築と違って2段階では考えません。震度6強程度の大地震を想定し、倒壊しないこと(人命を守ること)を目標にします。
■ まとめ
上部構造評点が1.0ということは、震度6強程度の大地震がきても倒壊しない耐力をもった建物であることを意味します。つまり、たとえ建物が損傷しても、最低限、人命だけは守ることができるということです。
1.0あれば、大地震がきても建物が壊れないという意味ではないので注意が必要です。