昭和56年以降、木造住宅の耐震性能は変わったのか?

「昭和56年以前の建物が危ない。古い耐震基準で建てられているから」

工事現場でよく聞く話ですが、実際どのくらい違うものなのでしょうか。

これまで、大きな地震が発生して大きな被害が出ると、建物の耐震基準が改正されてきました。特に大きな耐震基準の改正となったのが昭和56年だったのです。

昭和53年に発生した宮城県沖地震の被害は大きく、これがきっかけとなりました。建築基準法の改正が行われ、昭和56年6月以降、いわゆる「新耐震基準」が施行されました。

ここでは、特に木造住宅に注目してみます。

■ 必要壁量の変遷

木造住宅には仕様規定というものがあり、その中で必要壁量が定められています。これは地震や風の水平力に対抗するため、最低限これだけの量の耐力壁を設けなさい、という規定です。

一般的な木造住宅の設計では、地震用の必要壁量と風圧用の必要壁量を比較して大きい方を採用し、それを満足するよう耐力壁を設けます。この地震用の必要壁量の算定に用いる係数が、新耐震基準では大きく引き上げられたのです。

【地震用必要壁量の算定に用いる係数の変遷】

 昭和25年
(1950年)
昭和34年
(1959年)
昭和56年
(1981年)
平成12年
(2000年)
  旧耐震基準新耐震基準2000年基準
<重い屋根>    
2階建の2階121521同左
2階建の1階162433同左
平屋建1215同左同左
     
<軽い屋根>    
2階建の2階81215同左
2階建の1階122129同左
平屋建81211同左

各階の床面積に上記の係数を掛けることで必要壁量を算定し、その数値以上の量の耐力壁が必要になります。つまり係数が15から21に上がったということは、その比率分必要な耐力壁の量が増えたことになります。

上記の表から計算すれば、次のように1.25~1.4倍になっていることがわかります。

 「重い屋根」の2階建の2階の場合、15→21で1.4倍。

 「重い屋根」の2階建の1階の場合、24→33で約1.38倍。

 「軽い屋根」の2階建の2階の場合、12→15で1.25倍。

 「軽い屋根」の2階建の1階の場合、21→29で約1.38倍。

ここで、耐力壁の量というのは単純な長さだけでなく、耐力壁の種類(筋かい、構造用合板など)を考慮した量です。耐力壁の種類によって倍率が定められ、それを乗じて計算しますので、強い壁なら短い長さで済みます。

法律の最低限度で建てられた建物であれば、耐力壁の量から単純に考えても、新耐震基準の前後で結構な差がついていることがわかります。

■ 2000年基準

平成12年(2000年)に建築基準法が大改正されました。平成7年(1995年)の阪神淡路大震災での被害を踏まえ、木造住宅の構造に関する仕様が明確にされました。筋かい金物、柱頭・柱脚金物、耐力壁の配置バランスのチェック、基礎の仕様などです。

上記の表を見ると、地震用必要壁量の算定に用いる係数に変化はありません。しかし、建物の耐震性能は壁量だけで決まるものではなく、接合部の強さ、耐力壁の配置のバランス、基礎の仕様など色々な要素が関わります。

最低限の性能が確保すべく、この2000年基準により明確な仕様が定められたのです。

■ まとめ

昭和56年の新耐震基準施行の前後で、木造住宅の耐震基準は大きく変わっています。したがって、旧基準のギリギリで設計された建物は、特に注意が必要です。

また2000年基準以前の建物については、筋かいや柱頭・柱脚の金物、ねじれの検討、基礎の仕様などが曖昧でしたので、その点も気をつけなければなりません。

なお、新耐震基準を満たしている建物かどうかの判断は、建物が完成した時ではなく、建築確認が行われた日が昭和56年5月31日以前であるか、6月1日以降であるかがポイントになります。