雨が降っているのにコンクリート打設していいの?
コンクリートはセメントと骨材(砂利)と水を混ぜてつくりますが、水とセメントの比率がコンクリート強度に大きく影響し、水が多すぎれば強度は低下します。
生コン工場からコンクリートが出荷される際、設計強度が得られるように水の量も調整されているため、もしコンクリート打設現場で雨が降っていればコンクリート強度の低下が懸念されます。
コンクリートの打設は、降雨時を避けるのが原則です。
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しかしながら実際の現場では、多少の雨が降っていてもそのままコンクリートを打設する事例は少なくないと思います。
その理由としては、天気の判断の難しさと時間的な問題があります。また、コンクリート打設は時間がかかるため、打設中に天候が変化することもあります。
特に工期に余裕がなく、どうしてもこの日には打設しておきたいという場合、多少の雨なら無理をすることも予想されます。必要な強度を確保すべく、ある程度余裕のある配合になっているため、このような状況で打設しても問題なく強度が出てきた経験があるのでしょう。
また、工場に発注してコンクリートを練ってしまうと、打設直前に急にストップがかけにくい事情があります。コンクリートは生ものであり、翌日まで置いておくわけにはいきません。新たに費用が発生してしまいます。職人やポンプ車の手配も再度必要です。
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では、どのくらいの雨ならば打設してもいいのか。
建築基準法ではそこまで決められていません。雨で中止にするかしないかは、現場監督の経験による個々の判断です。
自分もこれまで色々コンクリート関係の書籍を見ましたが、判断基準について詳しく言及しているものはあまり見たことがありません。
その中で「建築現場のコンクリート技術」(柿﨑正義・玉水新吾 著/学芸出版社)という本は、具体的な数値を挙げ、一番詳細に書かれていたので一部をここで引用します。
建築現場のコンクリート技術 (プロのノウハウ) [ 柿崎正義 ]
■ コンクリートの打込み作業をしてもよい雨降り
一般的には、
① 降雨量4㎜/h程度の場合で、責任技術者の指示によるとき
② 小雨で1時間に1~5㎜(24時間で5~20㎜)(雪の場合は降雪量の1/10を雨量として判断する)の場合
③ 現場管理者が雨具を着用しないでコンクリート打込み作業に耐えられる状態
であれば、コンクリートを打ち込むことができると言われています。
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この本では、以上の内容に加えて、色々な問題・注意事項や打込み中に雨が降り出した時の対応などが書かれています。
特に次の記述は参考になりました。
単位水量を185kg/㎥(水/セメント比が55%のとき)、降雨量5㎜/hのときの単位面積当たりの水量は5kg/㎡・hとなり、コンクリート強度が1.3~2.1N/㎟減少します。
降雨によってコンクリートの強度低下がどの程度起こりうるのかを予想し、設計した強度を確保できるのかどうか、ここが判断の大きなポイントとなるでしょう。
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この他、降雨による作業性の低下や表面仕上げの品質低下など注意が必要です。
実際の現場で降雨量を把握することや翌日の降雨量の予測は困難なため、降雨量の数値に基づく厳格な線引きは現実的ではないでしょう。降雨量の数値を目安とした上で、例えば降雨を想定したコンクリート配合にしたり、事前に雨養生の準備を整えたり、降雨後には迅速に判断・連絡・対応を行う必要があります。